七十二候

二十四節気は半月ごとの季節の変化を示しますが、これをさらに5日ずつにわけて、気象の動きや動植物の変化を知らせるのが七十二候で、これも古代中国で作られました。古代のものがそのまま使われている二十四節気に対し、七十二候の名称は何度も変更されています。日本でも、日本の気候風土に合うように何度か改訂されました。1874(明治7)年の「略本暦」では、それまでと大幅に異なる七十二候が掲載され、現在ではこの七十二候がつかわれています。以下に示すのは「略本暦」による七十二候です。ただし、旧字体は新字体におきかえ、読みも現代仮名遣いに書換えています。

芒種次候(第26候)の「腐草為蛍[かれたるくさほたるとなる]」は、「枯れた草が蛍になる」という意味です。明治15年までは略本暦に記載されていましたが、 どうも嘘っぽいとの理由で明治16年の暦ではこの候だけが外され、明治17年からは七十二候そのものが暦から削除されました。

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  七十二候
日取り(頃) 黄経 No. 名称 読み 意味
立春 初候 2月4日 315 1 東風解凍 はるかぜこおりをとく 東風が厚い氷を解かし始める
次候 2月9日 320 2 黄鶯[目見][目完] おうこうけんかんす うぐいすが山里で鳴き始める
末候 2月14日 325 3 魚上氷 うおこおりをはいずる 割れた氷の間から魚が飛び出る
雨水 初候 2月19日 330 4 土脉潤起 つちのしょううるおいおこる 雨が降って土が湿り気を含む
次候 2月24日 335 5 霞始靆 かすみはじめてたなびく 霞がたなびき始める
末候 3月1日 340 6 草木萠動 そうもくめばえいずる 草木が芽吹き始める
啓蟄 初候 3月6日 345 7 蟄虫啓戸 すごもりむしとをひらく 冬ごもりの虫が出てくる
次候 3月11日 350 8 桃始笑 ももはじめてさく 桃の花が咲き始める
末候 3月16日 355 9 菜虫化蝶 なむしちょうとなる 青虫が羽化して紋白蝶になる
春分 初候 3月21日 0 10 雀始巣 すずめはじめてすくう 雀が巣をかまえ始める
次候 3月26日 5 11 桜始開 さくらはじめてひらく 桜の花が咲き始める
末候 3月31日 10 12 雷乃発声 かみなりすなわちこえをはっす 遠くで雷の声がし始める
清明 初候 4月5日 15 13 玄鳥至 つばめきたる つばめが南からやってくる
次候 4月10日 20 14 鴻雁北 こうがんかえる 雁が北へ渡っていく
末候 4月15日 25 15 虹始見 にじはじめてあらわる 雨の後に虹が出始める
穀雨 初候 4月20日 30 16 葭始生 あしはじめてしょうず 葦が芽を吹き始める
次候 4月25日 35 17 霜止出苗 しもやみてなえいずる 霜が終わり稲の苗が生長する
末候 4月30日 40 18 牡丹華 ぼたんはなさく 牡丹の花が咲く
立夏 初候 5月5日 45 19 [圭/龜]始鳴 かわずはじめてなく 蛙が鳴き始める
次候 5月10日 50 20 蚯蚓出 みみずいずる みみずが地上にはい出る
末候 5月15日 55 21 竹笋生 たけのこしょうず 竹の子が生えてくる
小満 初候 5月21日 60 22 蚕起食桑 かいこおきてくわをはむ 蚕が桑を盛んに食べ始める
次候 5月26日 65 23 紅花栄 ばにばなさかう 紅花が盛んに咲く
末候 5月31日 70 24 麦秋至 むぎのときいたる 麦が熟し麦秋[ばくしゅう]となる
芒種 初候 6月6日 75 25 螳螂生 かまきりしょうず 螳螂が生まれ出る
次候 6月11日 80 26 腐草為蛍 かれたるくさほたるとなる (腐った草の下から蛍が生ずる)
末候 6月16日 85 27 梅子黄 うめのみきなり 梅の実が黄ばんで熟す
夏至 初候 6月21日 90 28 乃東枯 なつかれくさかるる 夏枯草が枯れる
次候 6月27日 95 29 菖蒲華 あやめはなさく あやめの花が咲く
末候 7月2日 100 30 半夏生 はんげしょうず からすびしゃくが生える
小暑 初候 7月7日 105 31 温風至 あつかぜいたる あたたかい風が吹いてくる
次候 7月12日 110 32 蓮始開 はすはじめてひらく 蓮の花が開き始める
末候 7月17日 115 33 鷹乃学習 たかすなわちたくしゅうす 鷹の幼鳥が飛ぶことを覚える
大暑 初候 7月23日 120 34 桐始結花 きりはじめてはなをむすぶ 桐の実がなり始める
次候 7月29日 125 35 土潤溽暑 つちうるおうてむしあつし 土がしめって蒸し暑くなる
末候 8月3日 130 36 大雨時行 たいうときどきふる 時として大雨が降る
立秋 初候 8月7日 135 37 涼風至 すずかぜいたる 涼しい風が立ち始める
次候 8月13日 140 38 寒蝉鳴 ひぐらしなく ひぐらしが鳴き始める
末候 8月18日 145 39 蒙霧升降 ふかききりまとう 深い霧が立ち込める
処暑 初候 8月23日 150 40 綿柎開 わたのはなしべひらく 綿を包む咢[がく]が開く
次候 8月28日 155 41 天地始粛 てんちはじめてさむし ようやく暑さが鎮まる
末候 9月2日 160 42 禾乃登 こくものすなわちみのる 稲が実る
白露 初候 9月8日 165 43 草露白 くさのつゆしろし 草に降りた露が白く光る
次候 9月13日 170 44 鶺鴒鳴 せきれいなく せきれいが鳴き始める
末候 9月18日 175 45 玄鳥去 つばめさる つばめが南へ帰っていく
秋分 初候 9月23日 180 46 雷乃収声 かみなりすなわちこえをおさむ 雷が鳴り響かなくなる
次候 9月28日 185 47 蟄虫[土不/一] むしかくれてとをふさぐ 虫が土中に掘った穴をふさぐ
末候 10月3日 190 48 水始涸 みずはじめてかるる 水が凍り始める
寒露 初候 10月8日 195 49 鴻雁来 こうがんきたる 雁が飛来し始める
次候 10月13日 200 50 菊花開 きくのはなひらく 菊の花が咲く
末候 10月18日 205 51 蟋蟀在戸 きりぎりすとにあり きりぎりすが戸にあって鳴く
霜降 初候 10月23日 210 52 霜始降 しもはじめてふる 霜が降り始める
次候 10月28日 215 53 霎時施 こさめときどきふる 小雨がしとしと降る
末候 11月2日 220 54 楓蔦黄 もみじつたきばむ もみじや蔦が黄葉する
立冬 初候 11月7日 225 55 山茶始開 つばきはじめてひらく つばきの花が咲き始める
次候 11月12日 230 56 地始凍 ちはじめてこおる 大地が凍り始める
末候 11月17日 235 57 金盞香 きんせんかさく 水仙の花が咲く
小雪 初候 11月22日 240 58 虹蔵不見 にじかくいれてみえず 虹を見かけなくなる
次候 11月27日 245 59 朔風払葉 きたかぜこのはをはらう 北風が木の葉を払いのける
末候 12月2日 250 60 橘始黄 たちばなはじめてきばむ 橘の葉が黄葉し始める
大雪 初候 12月7日 255 61 閉塞成冬 そらさむくふゆとなる 天地の気が塞がって冬となる
次候 12月12日 260 62 熊蟄穴 くまあなにこもる 熊が冬眠のために穴に隠れる
末候 12月16日 265 63 [魚厥]魚群 さけのうおむらがる 鮭が群がり川を上る
冬至 初候 12月22日 270 64 乃東生 なつかれくさしょうず 夏枯草が芽を出す
次候 12月27日 275 65 麋角解 さわしかつのおる 大鹿が角を落とす
末候 1月1日 280 66 雪下出麦 ゆきわたりてむぎのびる 雪の下で麦が芽を出す
小寒 初候 1月5日 285 67 芹乃栄 せりすなわちさかう 芹がよく生育する
次候 1月10日 290 68 水泉動 しみずあたたかをふくむ 地中で凍った泉が動き始める
末候 1月15日 295 69 雉始[句隹] きじはじめてなく 雄の雉が鳴き始める
大寒 初候 1月20日 300 70 款冬華 ふきのはなさく ふきのとうがつぼみを出す
次候 1月25日 305 71 水沢腹堅 さわみずこおりつめる 沢に氷が厚く張りつめる
末候 1月30日 310 72 [奚隹]始乳 にわとりはじめてとやにつく 鶏が卵を産み始める

この文書について

富山いづみ <admin@nnh.to>